住宅ローンの金利で比較する場合、基準金利を見ないで、引き下げが適用された優遇金利で比べるようにするのが大切です。
ただ、優遇金利を見たときにも、またややこしい部分が出てきます。
それが、「当初期間優遇金利」と「通期(全期間)優遇金利」というもの。
その名の通り、「最初の一定期間優遇されるもの」と「全期間にわたって優遇されるもの」なのですが、変動と固定という金利タイプも絡んでくるので、どっちがお得なのか、ぱっと見ではよく分かりません。
「金利タイプ」に対して、こちらは「金利プラン」と呼ばれることもあります。


優遇金利の「当初期間引き下げ」と「全期間引き下げ」の違いや、どっちを選ぶのがお得なのか実際のシミュレーションを交えて詳しく見てみます。
この記事の目次
当初期間優遇(当初引き下げプランなど)

当初期間優遇は、最初の一定期間の優遇幅と、その期間を終えた後の優遇幅が違うものです。
固定金利期間選択型で適用されることが多くなっています。
基本的には、当初期間中は金利は大きく引下げられて、期間が終わると引き下げ幅が小さくなります。(当初期間中は「全期間優遇」よりも引き下げ幅が大きいのが一般的です。)
適当な例で言うと
返済期間30年、固定金利期間10年で借りる場合
固定金利期間の10年間は、基準金利から-2.0%引下げられるが
それ以降の11年目からは、基準金利から-1.0%の引下げとなる
というように、優遇の幅が変わります。
当初優遇金利を選ぶ場合は、終了後の優遇金利も含んでしっかりとシミュレーションする必要があります。
全期間優遇(通期引き下げプランなど)

全期間優遇というのはその名の通り、返済期間中ずっと一律の優遇を受けられるものです。
例えば
「基準金利(店頭金利)から通期一律-1.5%引下げます」という場合
ずっと同じ引き下げ幅(-1.5%)が適用されます。
一般的に当初期間優遇の当初期間と比べると、引き下げ幅は小さく設定されます。
変動金利の場合には、全期間優遇のみ選べることも多いです。
「当初期間優遇金利」と「通期(全期間)優遇金利」はどっちがお得?

ここでは、変動でも固定でも「通期引き下げプラン」「当初引下げプラン」のどちらかを選択できる、「住信SBIネット銀行のネット専用住宅ローン」を例にとってシミュレーションしてみます。
借入:3000万円・返済期間:35年
新規借入・元利均等返済・ボーナス払い、繰上返済なし、諸費用は考えない。
「当初引下げプラン」「通期引き下げプラン」それぞれで、
「変動金利35年」「全期間固定35年」「固定期間10年変動25年」
という条件で借りた場合のシミュレーションをして総返済額を見てみます。
金利は特約終了時も含め2018年3月の金利で仮定。また、金利の変動は考えないものとしている点にご注意ください。
当初引き下げプラン
変動金利35年
【当初5年間 0.975%】(基準金利:2.775% 引下げ幅:-1.80%)
【以降30年間 2.075%】(基準金利:2.775% 引下げ幅:-0.70%)
総返済額:40,104,959 円
住信SBIのネット専用住宅ローンでは、「当初引下げプラン」の「変動金利」を選択した場合、「借入れから60ヵ月経過した後の6月または12月(どちらか早い方)の返済日」までが「当初の特約期間」となります。(ここでは5年としています。)
「当初の特約期間」満了前に、固定金利タイプへ切替えた場合も、「当初の特約期間」が満了したものとみなされ、金利引下げ幅は小さくなります。
全期間固定金利35年
【全期間 1.32%】(基準金利:3.67% 引下げ幅:-2.35%)
総返済額:37,477,654 円
当初固定金利10年 - 変動金利25年
【固定金利10年 0.77%】(基準金利:2.47% 引下げ幅:-1.70%)
【変動金利25年 2.075%】(基準金利:2.775% 引下げ幅:-0.70%)
総返済額:37,979,928 円
通期引き下げプラン
変動金利35年
【全期間 0.457%】(基準金利:2.775% 引下げ幅:-2.318%)
総返済額:32,468,679 円
全期間固定金利35年
【全期間 2.37%】(基準金利:3.67% 引下げ幅:-1.30%)
総返済額:44,171,005 円
当初固定金利10年 - 変動金利25年
【固定金利10年 1.17%】(基準金利:2.47% 引下げ幅:-1.30%)
【変動金利25年 1.225%】(基準金利:2.775% 引下げ幅:-1.55%)
総返済額:36,733,269 円
結局どっちがお得か
このシミュレーションでは、金利の変動を考えていませんので、こっちがお得だと言い切ることはできませんが、ひとつの目安としてみましょう。
全期間固定35年では、「当初引下げプラン」が断然お得になっています。なぜ、固定35年の通期引下げプランが用意されているのか謎なレベルです。
変動金利では、「通期引き下げプラン」が断然お得になっています。
「固定金利期間選択型」の場合は、今回の例では、固定期間終了後に変動金利に切り替えていますが、さらに固定を選ぶ場合はまた変わってきます。
固定期間終了後の金利タイプ、その時点の金利の動向も頭に入れてシミュレーションする必要がありそうです。
「当初期間優遇金利」と「通期(全期間)優遇金利」について まとめ
当初期間優遇は、最初の一定期間の優遇幅と、その期間を終えた後の優遇幅が違うもの。
当初期間中は金利は大きく引下げられて、期間が終わると引き下げ幅が小さくなるのが一般的。
全期間優遇というのはその名の通り、返済期間中ずっと一律の優遇を受けられるもの。
変動金利の場合には、全期間優遇のみ選べることも多いです。
「当初優遇は固定金利に」「全期間優遇は変動金利に」というのが一般的な考え方ですが、今後金利上昇の可能性も高いといわれていますので、しっかりとシミュレーションして選ぶ必要がありそうです。