住宅ローンの金利タイプは大きく分けると「固定」か「変動」の2つ(プラス2つの組み合わせ)。
一番金利が低い「変動金利」。新規で住宅ローンを借入れる人の約半数はこの変動金利で借りています。
金利が低いということは、借りた金額(元金)を早く返せるということ。多くの金融機関でも基本的にはこれが勧められるのです。



変動金利の推移や仕組みやメリット・デメリット、どういう人が選ぶべきか、今後上がるのかどうかなどについて詳しく見ていきます。
この記事の目次
変動金利の推移を見てみる

※ 主要都市銀行のHP等により集計した金利(中央値)を掲載。なお、変動金利は昭和59年以降、固定金利期間選択型(3年)の金利は平成7年以降、固定金利期間選択型(10年)の金利は平成9年以降のデータを掲載。
※ このグラフは過去の住宅ローン金利の推移を示したものであり、将来の金利動向を約束あるいは予測するものではありません。
出典:住宅金融支援機構HP「民間金融機関の住宅ローン金利推移(変動金利等)」より


変動金利は9年ほど2,475%から動いていません。
これは「店頭金利(表面金利・基準金利)」で、だいたいの金融機関で短期プライムレートに1%くらいを上乗せした金利となっています。
実際には、「優遇金利」分の引き下げ幅が変動することで、それぞれの金融機関での「適用金利」は毎月変動しているというわけです。
金融機関での引き下げ競争が起こって、適用金利0.5%なんていうものも多くなっているのです。
▶店頭金利・優遇金利・適用金利って何?ややこしい3つの金利の違いとは
変動金利型の仕組み

変動金利型は、返済中に金利や返済額が変動するタイプ。借入金利や返済が一定ではありません。
対する金利タイプとして、金利が変動しない「固定金利型」があります。
固定金利型よりも基本の金利が低い
金利が下がれば、固定金利型よりもお得になる
金利が上昇した場合のリスクがつきまとう
金利は「半年に1回」見直されて、
返済額は「5年に1回」見直されます。
さらに詳しく見ていきます。
金利は半年に1回見直される
変動金利は、1年に2回見直されます。一般的には4月と10月に変更されます。
「短期プライムレート」というものを基準にして金利が上下するのですが、実際に更新されるのは、半年ごとです。
4月10月に見直された金利は適用されるのは数ヶ月後だったりします。
金利は半年ごとに見直されますが、返済額については5年ごとに見直されます。
【5年ルール】返済額は5年ごとに見直される
変動金利の場合、金利が変動しても、原則として返済額は5年間変わりません。「5年ルール」と呼ばれるものです。(一部銀行では半年に1回の金利見直しと同時に返済額が見直されるところもあります。)
金利が大きく上昇して、そのたびに返済額も上がってしまうと、家計の負担が大きくなってしまいます。
その危険性をおさえて、少しでも返済計画を立てやすくしてくれるのがこの「5年ルール」です。
さらに、大幅に金利が上がってしまって返済額が変動するときは、増額率は25%までと決まっています。
【1.25倍ルール】返済額の増加は1.25倍まで
大きく金利が上がってしまうと、一気に返済額も上がってしまう可能性が出てきます。
これを防ぐために、変動金利では金利変更後の返済額は「それまでの1.25倍まで」と決まっています。
「1.25倍ルール」と呼ばれます。返済額が急激に上がってしまうというリスクをおさえてくれています。




変動金利のリスク



ここまでに見てきた「金利の見直しは半年に1回」「返済額は5年間変わらず」「返済額の増加は1.25倍まで」という変動金利の特徴の流れに沿ってリスクについてもっと深く考えてみましょう。
「返済額が増えるとキツい」とか「総返済額で損してしまう」どころではない恐さがあります。
さらに具体的に詳しく見ていきましょう。
返済額の内の元金と利息の割合は変動する


5年間は返済額は変わらないものの、返済額のうちの「元金」と「利息」の支払い分の割合は、金利の見直しによって変動しています。
分かりやすく適当に作った極端な例で見ると
借入当初、毎月「10万円返済」で、内訳は「元金分8万円・利息分2万円」払うことになった。
半年後、金利上昇で見直されて毎月「10万円返済」で、内訳「元金分7万円・利息分3万円」になった。
(金利が上がると利息分が増えるので、10万円から利息分を引いた額が元金充当分となります。)
さらに上がっていくとどうなるでしょう。「元金分5万円・利息分5万円」「元金分3万円・利息分7万円」…。
というように、返済額は変わらなくても、元金がほとんど減らずに、利息ばかりを払っている状態が起こり得るんです。


未払い利息が発生する危険性
先ほど「元金分3万円・利息分7万円」でかなりツラいところまできてしまっていましたが、もっと金利が大幅に上昇してしまっていたらどうなるでしょう。


そうなると、毎月の返済額では支払い切れない不足分が出てきてしまいます。これを「未払い利息」といいます。
元金は減っていかないのに、利息だけが積み重なっていく最悪の状況です。
未払い利息は、分割で清算したり、一括で返済したり、返済を続けながら未払い分を清算していくなどの方法で払っていくことになりますが、金融機関によっても方法は違うようです。
借り始めの金利が低くて返済額も少なくなっていると、この未払い利息が発生する危険性は高くなってしまいます。



5年間は返済額が変わらないことで、普通に引き落されているだけでは、金利が上昇していることに気付くのが遅れてしまうという可能性もあります。
最低でも半年に1回の金利の変動についてはチェックしておくべきでしょう。
今より金利が下がることは期待できない状況
今よりも金利が下がってくれれば、変動金利の本来のメリットが活きてきます。
でも実際は、今よりも下がるということはまず考えにくい状況です。
現在の低金利の情勢は、日銀が繰り出した「金融政策」によるものです。
作られたものですあり、今の低金利の状況こそ「特別なケース」だとも言えます。いつまでもこの状態が続くとは思えません。
日銀の金融緩和政策はそろそろ出口に向かう方向だと見られています。どうやって終わるかを考え出している時期だとされています。

急激な金利上昇ってあり得るの?
「今の低金利の情勢に慣れてしまっていて、急激な金利の上昇なんてない」「そんなヒドいことはしなでしょ」とみんなどこかで考えてしまっています。
バブル期には数年間で3%ほど金利が上昇したこともあります。それはさすがに、異質すぎる例ですが、あり得ないとは言い切ってしまうことは誰にもできません。
とはいえ、この低金利の状況から一気に跳ね上げると経済自体が破綻してしまうくらいのことになるでしょうし、急激にというのは考えにくいのかもしれません。

固定金利に借り換えるのも難しいこと


変動金利から固定金利に借り換えてメリットを出そうと思うと、動き続ける金利の動向を常にチェックして、迷い無く即座に行動しなければいけません。
変動から固定への借り換えは、今までの借入金利よりもアップしてしまいます。毎月返済額も増えます。総返済額も増えるかもしれません。
それでも安心を取りたいのなら、すぐにでも借り換えておくべきだと思います。

基本的には、変動金利より固定金利の方が先に金利が上昇します。
変動金利が上がり始めたときに借り換えようと思ったら、固定金利はすでにもっと上がっている可能性があるのです。
ということは、普通でも金利は高くなるのに、もっと一気に上がってしまうことも考えられるのです。
「変動金利が上がったから固定に切り替える」ではもう遅いと考えられます。
固定金利への借り換えを考えている人は、固定金利の基準である長期金利の動向をチェックして、固定金利が上がる雰囲気を感じ取って借り換えるべきなのです。
借り換えを申し込んでから実際に借り換えるまでにも、ある程度の期間がかかるということも頭に入れておく必要があります。

繰上返済で早期完済を目指す
変動金利を何となく借りてしまって「どうしよう…。」と思った人は、「さっさと返してしまう」のが一番です。
リスクはあるとはいえ、固定金利に比べるとやっぱり低金利であることは魅力。せっかくなら低金利のメリットを活かしてお得に返済してしまいましょう。


「繰り上げ返済」を利用して、早期完済を目指しましょう。
▶繰り上げ返済とは?2つのタイプのメリット・デメリットについて
変動金利の仕組みやリスクについて まとめ
変動金利の仕組みやリスクについていろいろ見てきました。
ここまでの話を踏まえて、今変動金利を選ぶべきなのはこんなタイプの人です。
- 返済期間が短く完了できる人
- 借入額が少なく済ませられる人
- 金利が上昇してしまった場合でも返済していける見込みがある人
- 短期間で返済してしまえる計画を立てられている人
- 金利の動向を見て、上昇したときの体勢をとっておける人
- この先、収入の増加が見込める人
- 将来を見すえたリスク管理ができる人
現在の低金利時代に底値の金利で借りて、家計はなんとかやっていけるというような状況だとすると、金利が上昇するとアウトとなる可能性が高くなります。
住宅ローンは借金ですから、借りてしまったものは返さないといけません。
最悪の状況となっても返済していけるのかどうか、変動金利を利用する場合は、リスクをしっかり把握しておく必要があります。
-
-
固定と変動どっちを選ぶべき?金利タイプ別のメリット・デメリット
住宅ローンを選ぶうえで大切なポイントのひとつ「金利タイプ」。 大きく分けると変動金利と固定金利に分かれます。さらに、固定金利には「一定の期間」のものと「全期間」のものがあります。 「おすすめされて何と ...