住宅ローンを組んだ場合、基本的には毎月いくらか返済していきますが、他にも支払い方法があるのをご存知でしょうか。
住宅ローンの「ボーナス併用払い」。聞いたことがあるかもしれません。
「ボーナスがもらえる人なら住宅ローン返済に組み込めるから有利だ」
「その分返済期間が短くできる」「借入可能額を増やすことができる」
となんとなくイメージしている人が多いのですが、それは間違いです。
ボーナス払いは危険だとよく書かれていますがその理由はどういったことなんでしょうか。利用を考えているなら、ボーナス払いの仕組みをしっかり理解して、メリット・デメリットを知り、しっかりシミュレーションをしてみましょう。
この記事の目次
そもそも、ボーナス併用払いとは?どんな仕組み?
公務員の人や会社員の人は、毎月の給料の他に夏と秋の年2回、ボーナス(賞与)が支給される人が多くいます。
「ボーナス併用払い(ボーナス払い)」とは、このボーナスがもらえる月だけ返済額を増やして、その分毎月の返済額を少なくする返済方法を言います。
住宅ローンの返済を、「毎月の給料からだけで支払う」のか、「ボーナスも含んで支払うのか」という違いになります。
毎月コツコツと支払っていくのか、毎月の負担を減らしておいて、負担分をボーナス月に大きく支払うのか、の違いです。
だから、ボーナス併用払いを利用することで、その分返済期間が短くできたり、借入可能額を増やすことができるわけではないのです(そう言う捉え方もありますが要注意!後述)。


ボーナス払いには、「ボーナス月の返済額を増やす方法」と、「借入額のうち、ボーナス払いで返済する額を最初に決めておく方法」の2つの方法があります(後でそれぞれシミュレーションしています)。
ボーナス払いには上限(割合)がある

例えば、フラット35では借入金額の40%までと決められています。「3,000万円借入する場合、1,200万円まではボーナス払い分で返済できる」ということになります。
その他、多くの金融機関でも、上限は借入金額の40〜50%くらいとなっています。
では、ボーナス払いが本当にお得なのか、メリット・デメリットなどさらに詳しく見ていきましょう。
メリットは、通常月の返済額を減らすことができること
ボーナス払いのメリットは、通常の月の返済額を減らすことができること。
ボーナス払いを利用すると、借入する金額を「毎月返済分」と「ボーナス払い分」とに分けて平行で返済していくことになります。
例えば、住宅ローン2,000万円を35年で借りて、毎月返済分で「1,400万円を420回(12ヶ月×35年)」で支払って、ボーナス払い分で「600万円を70回(2回×35年)」で支払うという考え方になります。
そのことから、ボーナス払いを利用しない場合に比べて、毎月の返済額を少なくできるということになります。
ただし上の図の通り、毎月の返済額が減った分はボーナスの月に返済することになるので、1年の返済額で見ると結果は同じことだとも言えます。

返済期間を短縮・借入額を増やせる?

ボーナス払いを利用することで通常の月の返済額を減らすことができると書きましたが、毎月の返済額を減らさずに、ボーナス払いを利用すると、その分返済期間を減らすことや借入金額を増やすことに確かにつながるといえます。
「どうしても20年で住宅ローンを完済してしまいたいから」「どうしても〇千万円借りたいから」ボーナス払いを併用するというような人の場合です。
将来のライフプランをしっかり立てているように思えますがリスクはとても高く、ボーナスがなくなってしまうと、返済がかなり厳しくなります。
このことから、ボーナス払いは、「毎月の返済額を減らすことができるもの」と考えるのがベストです。
ボーナス払いのデメリット
ボーナス併用払いのデメリットには次のようなものが考えられます。
ボーナスは「確実にある」と言えるものじゃない

住宅ローンの返済期間は20年や30年と長いものになるのが一般的ですから、今はよくても、将来的に勤務先の業績が悪化してしまうことも考えられます。
ボーナスが年に1回になったり、無くなってしまう可能性も出てきます。最近では公務員の人でもボーナスがカットされることだってあります。
そうすると、ボーナス払い分が大きな負担となってしまいます。支払えないことになるかもしれません。
住宅ローンの月々の返済は、家計のうちでも大きなものになります。家計の負担を少なくするために設定したはずのボーナス払いが、逆に大きな家計の負担となってしまい、返済できなくなるリスクにもつながるというのは、大きなデメリットです。
ボーナス全額を貯蓄にまわすことができない
ボーナス払いを利用する場合、もらったボーナスのうちの大きな割合を住宅ローンの支払い分が占めてしまう人もいます。
住宅ローンの支払いに多くをとられてしまうと、その分、貯蓄や他の資金に回せる金額が少なくなってしまいます。

利息分が余分にかかって総返済額が多くなる
ボーナス払いを利用すると金利の負担が増えてしまうのです。
仕組みの部分で書きましたが、ボーナス払いは毎月の返済額を減らして、ボーナス時に大きく支払うから、毎年の支払いでは同じこと。
簡単に言えば、毎月の返済を待ってもらった分、ボーナス時に支払うというものです。具体的に数字を当てはめてみると、毎月3万円を待ってもらった分、ボーナスで36万円(18万円×年2回)支払うようなものです。
返済額では同じことになるのですが、利息は少し違ってきます。
利息は、元本の残債額に利率をかけて計算されるので、ボーナス払いを利用しない場合、コツコツと元金が減って利息額も減っていくことになります。
対して、ボーナス払いを利用する場合、返済がない6ヶ月の間に利息が余分に発生することになるのです。


【シミュレーション】ボーナス払いあり・なしでどう違うか計算してみると
「ボーナス払いあり」と「ボーナス払いなし」で、実際にシミュレーションして計算してみます。

ボーナス払いには、「ボーナス月の返済額を増やす方法」と、「借入額のうち、ボーナス払いで返済する額を最初に決めておく方法」の2つの方法があるので、それぞれでシミュレーションしてみました。
シミュレーションには住宅金融支援機構の「返済プラン比較シミュレーション」を利用しています。
「3000万円」を「35年」で「金利2%(全期間固定金利)」「元利均等返済」
- ボーナス払いなし
- ボーナス払いありA 【ボーナス月10万円(年2回)】
- ボーナス払いありB 【ボーナス分で600万円返済(借入額の20%)】
で比較してみます。
ボーナス払いなし | ボーナス払いありA | ボーナス払いありB | |
毎月返済額 | 99,378円 | 82,782円 | 79,503円 |
ボーナス月の返済額 | 0円 | 182,645円 | 199,099円 |
年間返済額 | 1,192,536円 | 1,193,110円 | 1,193,228円 |
利息総額 | 11,738,968円 | 11,758,873円 | 11,762,757円 |
総返済額 | 41,738,968円 | 41,758,873円 | 41,762,757円 |
ボーナス払いなしよりも、ボーナス払いありA 【ボーナス月10万円(年2回)】、ボーナス払いありB 【ボーナス分で600万円返済(借入額の20%)】の方が、毎月の返済額はおさえられているのが分かります。
しかし、総返済額でみると、ボーナス払いなしが利息分で少しお得になっているのが分かります。


ボーナスは、繰上返済に充てる方がお得では?
ボーナス払いを利用している場合、繰上返済をすると「その分はボーナス払い分に優先される場合」「ボーナス払い分と毎月の返済分の両方に充てられる場合」など金融機関によって違いがあるので注意しましょう。
「一部繰上返済の手数料が無料」という銀行も多くなっているので、ボーナスは繰上返済に充てるという人も多くなっています。
繰上返済はすべてが元金の返済に充てることができます。その分、利息の支払いも減らすことができるので、個人的には、ボーナス払いよりも繰上返済にまわす方がおすすめです。
関連記事 繰上返済とは?メリット・デメリットと期間短縮&返済額軽減の効果
住宅ローンのボーナス払いについて まとめ
ボーナス払いを利用する注意点としては、総支払額が若干多くなってしまうこと。
毎月の返済をなんとか乗り切るためにボーナス払いに頼り切ってしまうような状況では、ボーナスが減らされる・無くなってしまうと、返済ができなくなってしまう可能性があること。
ボーナスが確定しているに近い公務員の人や、大企業に勤めている人なら、毎月の返済額が減らすことができるので、ライフスタイルに合わせることができると、利用価値はあると思います。

